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芸科生の活動

08. 『白昼夢』
14年度生 総合芸術学系列 小原 翔吾

(1) 表現したかったこと

 私が音響表現したかったことは、白昼夢の感覚です。例えば会話をしていてふと相手から出た一言からインスピレーションを受けて一種の空想をしたり、非現実感を感じることが多くあります。その空想の時にまるで周りの音が聞こえないようなことが多く、相手に「話を聞いてた?」と言われたり、それが原因で私は耳が悪い、とレッテルを貼られたことがあります。そのように、ある「日常」のきっかけからインスピレーションされる刹那の「非日常」を体験し、日常に戻っていく感覚を、自らの白昼夢の感覚とと人体を解体される恐怖に焦点を置いて音響表現をしようとしました。

(2) それをどのように音響に置き換えようとしたか

 まず、私は音響作品に物語を求めました。なぜ、物語にしたかというと音響が音楽と違って具体的で日常的な音だからです。音響で物語を創ることで、音から連想される世界を共有でき、理解されやすい作品ができると思いました。さらに、私が表現したかった「恐怖」は日常にある怖い音(例えば、犬が吠える音、時計の秒針、家が軋む音など)から連想されることだったのでそうした日常空間のコンテクストを創る点で物語にする必要性を感じていました。また、自らが体感した主観的で、抽象的な白昼夢を人に伝えることは難しいと思った上に、音だけで表現しなければならない点から、中間発表では「恐怖」をテーマにした上でイギリスで実際に起きた少女誘拐バラバラ殺人事件を自らの白昼夢の体験をもとに、ドイツ人の少女がお留守番してる間に体験する怖い白昼夢を表現しようとしました。しかし、わかりやすさと具体性を求めた結果、コンテクストを描くことに重きを置いてしまい、テーマであった恐怖的な「白昼夢」を伝えることができませんでした。さらに、「恐怖」「ドイツ人の少女」「バラバラ殺人」と、テーマが多すぎてどこを強調したいのかわからなくなりました。 
その反省を活かして、「恐怖」に日常空間で陥る「非日常」を白昼夢として描きました。最初は時計の打刻音から少しずつ「非日常」へとすいこまれ、最終的に自分がバラバラにされたら、と白昼夢を見て、だんだん混沌としてきて、いきなり日常に戻ります。これは、夢や空想がふくらみだんだんしぼんで日常空間に戻るのではなく、わけがわからなくなり、ハッとするように現実に戻ることを表しています。この「白昼夢」の音響をつくるにあたってなるべく身近な音響を利用しました。切り刻んでるような音は、グレープフルーツを切る音をだんだん抑揚をつけて段階を表し、血の吹き出る音にシャワーのサンプリング音を流し、血が流れる音はペットボトルの中の水が揺れる音を録りました。その理由は、身近なこうした音には恐怖などの感情を生み出すきっかけ、つまり白昼夢や空想に陥るきっかけがあることを表現したかったからです。蝉の鳴き声が最後の混沌を表現するのに使っていますが、蝉がたくさん鳴いていることで、蝉が鳴いている夏の暑苦しさ、うっとうしさを表現し、そうした意味づけの指標となるように、息の乱れる音も同時に入れています。中間の時の作品では音響が逐次的な点が反省点でしたが、この最終的な作品では水の流れる音でも3種類使って、それをかぶせて血の流れの不規則さも表現できたし、逐次的で内容が容易に予測できていた前の作品の欠点を補えたと思います。また、音量の抑揚にとても気を遣いました。恐怖を表現するといっても、大音量をひたすら流しては抑揚が出ないので、逆に静けさ、音圧の無さを逆手に取り、不気味さを表現できた。なにより最後の混沌とする部分は音量を大きくし、混沌さを音響の複雑さ、音量の大きさで表現できた。そして、あたかもループするように、静かな打刻音で作品は終わります。作品として1分弱、と短いものの白昼夢が短いものである、というリアリティーを表現できたし、逐次的ではないからこそ短くまとめられた。

(3) 完成音響を聞いての自己評価

 一つの形として完成した作品は中間の反省を活かし、もっとも私が伝えたかった白昼夢の感覚を伝えることのできる作品になったと思う。中間ではコンテクストを強調していた点を、時計の打刻音に絞り、言いたいことを強調できた。反省点として、果たしてこれが「恐怖」なのかという点です。この悪い白昼「夢」はテーマが「不安」や「気持ち悪さ」と思われるかもしれない。そのためには恐怖としての音響のトラックをもっと盛り込むべきでした。恐怖の描写する音響が簡素すぎる点が反省点です。

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