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芸科生の活動

10. 『訳あり女の一人カフェ』
14年度生 音楽学系列 鹿野水月

(1) 表現したかったこと

 今回自分は女性として、その属性を考察して表現する事で自分と向き合いたかったので女性の内面を音響で表現する事にした。なので、雪乃さんという架空の人物のストーリーを作り上げて彼女の内面を音響で表現した。場面は東京の花火会場の近くのカフェ。その日は花火大会で花火を見ながらボーッと一人でカフェラテを飲んでいた。彼女にはかつて夫と子供がいたけれど、二人に関する記憶は彼女にとって曖昧になりつつある。彼女の記憶のほとんどを占めるのは網走刑務所での日々。寒い北の空気と冷たい孤独感。暫く思い出せなかった夫と子供に対する感覚とその先にある現実に彼女が向き合うとき、彼女にとって新しい人生が始まる。
この複雑な設定は、一人の女性を孤独に追い込む設定の方が個人色強くかつバックグラウンドの影響を濃く作品の中で表現できると思ったからである。

(2) それをどのように音響に置き換えようとしたか

 作品の中身を統一するために、表現したい女性の内面を「夢見がちかつ現実的な思考回路の矛盾。」という一つのテーマに絞った。そして記憶を辿ったり物思いに耽る役割を持つシチュエーションとして「一人カフェ」という設定を用意し、「一人の虚しさ」を表現するために大勢の人間を指す環境音である花火大会の音を強めにした。女性はそれぞれの事情を抱えて一人の時間と雰囲気を楽しむ。そして一人で記憶を辿っていると、ある一点でグッと現実のような空想に入り込む瞬間が女性にはある。この瞬間こそ女性の「夢見がちかつ現実的な思考回路の矛盾」であると考えた。そのために、前半の記憶を辿る間には様々な彼女の記憶の断片が走馬灯の様に登場する(この走馬灯感を際立たせるための工夫に一番手間取った。)そして真ん中でガッーとボリュームが上がり音がぷつりと消えるところで一気に彼女が世界に入り込んでいく様を表現した。後半のピアノ曲は雪乃さんの内面を表現した曲である。自分自身の経験、人生をあたかも劇的かつ美しく捉えてしまう内面の身勝手さを表現した。身勝手に始まり身勝手に終わるこの曲は中間部や適切な終止が用意されていない。自己完結しがちな女性の喋り方などを意識して作ったものだ。

(3) 完成音響を聞いての自己評価

 説明ありきであると思う。説明が補っている部分も大きい。しかし説明する音響作品の制作がテーマである本講義では自分の作品は問題ない程度にテーマに沿って仕上がっているのではないかと思う。私がそのために出来るだけ排除した音たちというのが、カフェ店内の音、雪乃さんの泣き声、カフェラテの泡の音、刑務所の音である。何のために一つの解釈に絞って表現するのか考えて、伝えるために必要のない音は出来るだけ排除されている。

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