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芸科生の活動

10. 『過去への旅路』
16年度生 映像芸術学系列 宮崎 さくら

(1) 何を表現しようとしたのか

 私は人がある過ぎ去った過去を思い出す過程を表現しようとした。私たちの世界では時間は過去・現在・未来へと進み、私たちはそれらを同時に体験することはできず、現在しか体験することができない。しかし過去というものは、私たちは完了形で体験したことであって、それを今体験することはできなくても、記憶として呼び起こすことが出来る。目をつむって呼び起こしたい記憶を探れば、段々と、最初は断片的にだが記憶が蘇ってくる。そして集中していくと、その時の温度や周りの音、自分の気持ちを思い出し、あたかも今その過去を追体験してるように感じる。しかしその瞬間、その過去は目の前から姿を消し、私たちは現在に引き戻される。その日その時その場所で体験したあの出来事は、記憶をどんなに呼び起こしても、もう二度と体験することはできない。思い出すことはできても、追体験することは不可能である。その過去を思い出している過程を音響で表現できたらと思う。

(2) それをどのように音響で表そうとしたか

  私は中間発表では全く異なった音響を発表した。そもそもテーマ自体を考え直し、中間発表では「昭和とSNS」というテーマだったのを「過去への旅路」に変更したので当然といえば当然である。なぜテーマ自体を変えたのかは、前のテーマで自分の考えが浅はかだったのと発表時の皆の反応で挫折感を感じ、その上、1週間という短い間で悩んでいる時間なんてない!と思いテーマ自体を変えることにした。中間発表での音響は私自身は私の思う昭和を表現出来ていたと思うし、実際本当に全部削除するのが惜しかった。今回のテーマでは、ピアノやシンバルを多く使い、冒頭部分から最後まで続く和音の倍音は、人間の中に流れる不変のベース音として用いた。これは勝手なイメージだが人間には普段は聞こえないが、このような倍音が鳴っているのではないかと思う。そこでここでは、和音そのものではなく、それが作り出す倍音を切り取って最初から最後まで繋げた。次に、シンバルを擦る音が左右からパンして交互に出てくるが、それは断片的に思い出す記憶を表現している。パンするのはそこに音響効果を産みたかったからである。そしてピアノの音、これには4つのパートを用意し、同じ音源だが違うタイミングで流している。これは記憶を呼び起こすための歯車を表現するとともに、ノスタルジーのようなものも感じさせる音にした。その後、記憶は段々鮮明になり、パッと消えて無くなるのだが、そこはオーケストラのチューニング音・拍手・ブザー音を段々大きくしていくことにした。オーケストラのチューニング音を使ったのは、一度に多くの楽器が動きチューニングしているので、その様子が記憶を組み立てているのに似ているのではないかと思ったからである。音量が段々と大きくなるのは、あやふやだった記憶がどんどん鮮明になる様を表現しようとした。そして、消えて無くなるところにウィンドチャイムを用いることでキラキラと思い出が儚く散っていくのを表現した。その後も歯車はすぐには止まらず残っているが私たちの体の中へ消えていく。

(3) 完成音響の客観的自己評価

 自分の中にあるものを表現するということが、私にはあまりにも難しい事だった。過去を思い出す過程を表現しただけで、その時の気持ちとかそういったものを表現するに至らなかった。一方、音素材を極力減らし、その中で表現できたのは良かった点だと思う。

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