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芸科生の活動

芸科生の留学記──ドイツ編2008

第5回 「つまずきの石」 芸術学科芸術メディア系列3年 YOさん

 こんにちは。今回はハンブルクの歩道に埋め込まれているStolpersteine(つまずきの石)を紹介します。

 “Stolpersteine” とは 10×10×10cm の石のことで、歩道に真鍮のプレートともに埋め込まれています。私は友達に指摘されるまでまったく気づきませんでしたが、注意してみると中央駅のそばや大学でも見つけることができます。

 ドイツ語で“stolpern”は何か障害物に“つまずく”という意味があるそうですが、このStolpersteineは表面に見える部分は真鍮のプレートだけで人が転ぶような凹凸はありません。ここでは何かが頭にひっかかるという意味が含まれています。その理由は立ち止まってプレートをよく見てみるとわかります。表面のプレートにはナチスによる迫害で犠牲になった人々の名前と生年月日、どこでなくなったかが刻まれているのです。犠牲者がかつて住んでいた家や生前なにか関係があった建物の前の歩道に埋め込まれており、ドイツだけでなくオーストリアやハンガリー、オランダにもあるそうです。

 私はこのStolpersteineは国による大々的なプロジェクトなのかと思っていましたが、調べてみるとある芸術家よってはじめられたことがわかりました。ケルンの芸術家Gunter Demnigさんは「名前が忘れられたとき、その人物は忘れ去られる」と考え、人々に犠牲者のことを思い出してもらい、ナチスによる暴力支配の歴史を忘れさせないためにこのプロジェクトを発案しました。初めての試みは1995年ケルンで行われ、その後徐々にドイツの都市に広がっていきました。ハンブルクでは2002年からこのプロジェクトが行われ、現在約2400のStolpersteineが埋め込まれています。

 Stolpersteineはとても小さいので気づかない人はずっと気づかないまま通り過ぎて行くかもしれません。ハンブルク大学の学生の中にこのプロジェクトを知らない学生もいました。Stolpersteineの存在は知っていてもプレートに書かれているのが犠牲者の名前であることや一人の芸術家によるプロジェクトであることは知らなかったそうです。そのくらい立ち止まってよく見なければプロジェクトの内容は気づきにくいものだと思います。

 ですがこのプロジェクトのすごいところは日常的に人々にひっかかりを与えられることです。戦争に関する映画や本を読んだときは別として、日常で過去の戦争の歴史を思い出すことはそんなにありません。そんな日常生活の中でこの小さなプレートを目にすると、戦争の歴史がふと頭に浮かびます。それは本当に小さな引っ掛かりで、立ち止まってじっくり考えたりするものではありません。しかし通学や通勤途中にStolpersteineを目にして、一瞬でも犠牲者のことを思い出すことが歴史を風化させないことにつながっていくのだと思いました。

2008年9月16日

Stolperstein ナチスによる迫害の犠牲者の名前、生年月日などが刻まれ歩道に埋められている。

大学近くのつまずきの石 石に刻まれた名前をホームページに入力すると犠牲者の詳細な情報を知ることができる。

気づかず通り過ぎる人 足元をよく見なければ気づかずそのまま通り過ぎてしまうこともある。

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